僕は立ち上がり、クーラーボックスを持ってくる。


中は既に溶けてしまっているが、常温よりは冷たい。


綺麗なタオルを水に浸らせ、少しだけ絞る。


冷たくなったそのタオルを九条の腕に巻き付けた。


「高階くんも、治療しないと」


「僕は大丈……痛っ」


急に九条に右腕の傷を触られて、跳ね上がるように痛む。


「大丈夫じゃないでしょ」


「そりゃ触られたら誰でも大丈夫じゃないって……」


九条は傷口に巻いてあったタオルをとり、未開封だったペットボトルを開けて僕の右腕に水をかける。


じくじくと痛みが増し、思わず顔をしかめた。


そして突然、余った水を一気に僕の頭にかけた。


驚いて、何も言えなくなる。


「ふ、ふふ……何その顔」


イタズラをした子供のように楽しそうに笑う。


「お前……やったな?」


僕もペットボトルを手に持ち、思いっきり九条の頭にかけた。


「ひゃっ!冷たー」


乾いていた頭の血も、水で流れ落ちた。


その代わりに、髪と服がびしょびしょになってしまったけれど、そんなこと1度も気にしなかった。