どんどん階段を上がっていく。
まだ僕の手首は掴まれたままで、離そうともしない。
彼女の後ろ姿から目をそらすように、周りを見る。
ビルの壁や天井は所々ひび割れていて、今にも崩壊しそうだ。
そして着いたのは3階の、パイプ椅子や長机が散乱した広い部屋。
奥にはダンボールが数枚敷いてあり、大量のカップ麺とペットボトルの水が置いてある。
「待ってて」
そう言って九条は僕から手を離し、椅子に置いてあったビニール袋をガサガサと漁る。
そしてまたこちらに戻ってきた。
「はい」
と、差し出されたその手にあったのは、3枚の千円札だった。
「え、なにこれ」
あまりにも予想外な展開に、拍子抜けした。
