「今日は、どうしたの?」
彼とは同期で、入社以来かれこれ3年もこうして仕事終わりにこの店に通っている。
どんな用で呼ばれたかなんて、彼からの言葉がなくても、一瞬の表情でわかるくらいには長い時間を過ごしてきた。
「そんなに焦るなよ…明日、休みだろ?」
ほら、ね。
そうやって困ったように眉をひそめるのは、あの子と何かあったときの癖。
「そうね。時間は大丈夫?」
「遅くなるって言ってある。それに…あいつも今夜は遅くなるって」
「せっかくの金曜日だったのに」
「そうだよな。ごめん。……忙しいなら、また今度でもいいんだ」
苦しそうに目を細めてグラスを傾け、目線を手元に落とすような仕草をすれば、わたしの言葉なんて泡のように消えていく。
ずるい。
こんな状態で放っておけるわけなんてないこと、知っているくせに。
