依織と出掛けたクリスマス三日前、
クリスマスの買い物に行ったら
御坂に会ってしまった……

『げっ』

思わず、そう呟いてしまう程に
会いたくない人物だった。

『蒼昊、はしたないですよ』

当然、隣を歩いていた依織には
聞こえたわけで、嗜められた(苦笑)

御坂との距離は離れているし、
向こうも気付いていない。

だけど、このまま擦れ違えば
確実に気付くだろう。

『ごめん、ついね』

依織を僕のマンションに引っ越させてからは
御坂に会うことはなかったから
つい、心の声が漏れてしまった。

そして、案の定、隣にいる
依織に気付かずに声をかけて来た。

「蒼昊、久しぶりだな♪*。」

やたらテンションの高い声に
内心、うんざりした。

せっかく依織と買い物に来たのに最悪だ。

『久しぶりだね。

よく、僕に話しかけられたものだね』

イライラを隠して(依織にはバレてるだろうけど)応えた。

声は出てなかったけど
隣で笑う気配がしたから
やっぱり、バレバレらしい。

『私のことを忘れて話さないでくださいよ』

多分、いや確実に狙って
僕の服の裾を引っ張って来た。

『ごめんよ』

少し下にある依織の頭を撫でた。

御坂は依織を認めると
あからさまに嫌そうな表情(かお)をした。

廿楽もそうだが、どうして
僕達の邪魔をしたがるんだ。

『蒼昊、眉間にシワが寄ってますよ』

少し、背伸びして、
僕の眉間に指を当てて伸ばそうとしている。

依織の、その可愛らしい行動に
笑みが溢(こぼ)れた♡*.+゜

『ありがとう♬*゜』

もう一度、依織の頭を撫でた。

御坂の方に向き直して言った。

『わかっただろう。

僕は依織が一番大事なんだよ』

はぁ~

何で縁を切ったら奴と
話さなきゃならないんだか。

僕達の邪魔をする者は
例え、かつての友人だとしても許さない。

呆けたままの御坂の横を
通り過ぎようとしたら
腕を掴まれた。

「何でだよ……」

耳元で囁かれた。

『じゃぁ、逆に訊くが
お前も廿楽も何で僕に拘(こだわ)るんだ?

友達は何も
僕だけってわけじゃなかったはずだ。

しかも、僕の恋路にまで口を出す権利はないはずだ!!』

確かに、高校時代は三人でいることが多かった。

だけど、卒業後は
行く大学がわかれたから
年に数回会うだけになっていった。

そして僕は依織と出会った。

心から愛し、守りたいと思える人に。

『私が蒼昊に頼り過ぎている部分が
あることは認めますがそれは
私達の問題であってあなた方には
一ミリも関係のないことです。

その手を離していただけますか?』

こんなに怒気を含んだ目をした
依織を見るのは初めてだった。

『そもそも、あなた方が
気に入らない部分は私が“男”だからですよね?』

その言葉に御坂が反応したのを
見逃さなかった。

『蒼昊の恋人が“女性”だったなら
あんなまわりくどいやり方で私を
蒼昊から離そうなんて考えなかったはずです』

【目は口ほどにものを言う】
というけど、今の依織の目は
正にそんな感じだ。

怒鳴るでもなく、声を低くするでもなく
声色はいたって普通なのに
怒りが伝わって来た。

『まぁ、質問に対する答えは
どうでもいいですが、
これだけもう一度言います。

その手を離してください』

依織に言われて、御坂は
僕の腕を掴んでいた手を離した。

項垂れたままの御坂を
その場に残し、僕達は帰って来た。

*:.*.:*:。∞。:*:.*.:*:。∞。:*:.*.:*

三日前を思い出すとまだモヤモヤする……

『蒼昊、どうかしましたか?』

いけないいけない、クリスマスの準備の途中だった。

『何でもないよ(苦笑)』

僕には依織がいてくれればいい。

それに、友人なら他にもいるんだから
あの二人のことは忘れよう。

『依織、これを運んでくれるかい?』

『わかりました(๑^ ^๑)』

恋人同士になって
初めてのクリスマス。

今日は嫌なことは考えずに
この時を楽しむことにしよう。

~end~