その夜は、なかなか寝つけなかった。

俺を見上げたあいつの怯えたような瞳と、腕の中の感触がよみがえる。

決して考えてはいけないその先を考えてしまう自分がいた。



あいつは俺を最低なやつだと思っているだろうか。

無理矢理あんなことをして、怒っているのではないだろうか。

それとも、信じていた幼なじみに裏切られてショックを受けているのだろうか。



俺はもう一度、あいつに会いたくなった。

一言謝って、あいつの気持ちを聞きたかった。



夜が明けると、俺はすぐに出かける準備をした。

あいつはまだ実家にいるのだろうか。



あいつの母親は専業主婦で、いつも家にいる。

その母親に何か思われるのが嫌で、中学生になった頃からあいつの家に遊びに行っていない。

高校生になった俺がふと訪ねたら変に思われるかもしれないが、それでも俺はもう一度ほのかに会いたかった。