甘くて、苦くて


その日の夜のことは事件と呼ぶことにしよう。

【 もう寝る? 】

村井君からのラインに、

本当はすごく眠たかったけど、

[ 寝れないからまだ起きてるよ!]

こう返した。

【 俺も眠くないからいま電話しない?】

[ うん、いいよー!]

平然を装って、返信したけど、

ドキドキが止まらなかった。

眠気なんか一気に吹っ飛んだ。

村井君との初めての通話は、

夜の11時すぎに始まった。

『もしもし…』

「お疲れ、いま何してた?」

『ベッドでゴロゴロしてたよー』

「俺も同じ!」

そこから、クラスの話、

村井君のサッカー部の友達の話、

文化祭の話、好きなアーティストの話で盛り上がった。

「あ、やばい、もう1時すぎてる。寝ないとな」

『え、もうそんな時間?寝なきゃね、、、』

寝なきゃ、と言いながら、

勿体無くて、おやすみが言えなかった。

「うん、、、

あのさ…文化祭の前の日って7時まで準備だよね?」

『うん』

「帰り…駅まで一緒に帰んない?」

『え……うん』

「じゃあ、そういうことで!

遅くまでありがと、おやすみ!」

村井君はちょっと早口でそう言って、

私がおやすみと返す前に通話を終了した。

これが事件だっていう、私の気持ち、わかるよね。

全然眠れなかった。

村井君のことを考えすぎて、寝不足だった。

抱き枕をぎゅっと抱きしめて、

なかなか落ち着かない心臓を

落ち着かせた夜だった。

文化祭前日まで、残り3日だった。

可愛くなりたいって、

思わず口に出して言っていた。

村井君の彼女になりたいって、

何回も心の中で呟いた。

村井君は、私のこと、どう思ってますか。