「昨日どうしたの?」

『あー、疲れて寝ちゃった』

嘘、本当は村井君のことを考えて眠れなかった。

「そっか、なら良いけど。

俺なんか変なこと言ったかなって気にしてたわ」

ドキドキした。

村井君が話しかけてくれたことにも、

私のことを気にしてくれていたことにも、

みんなに聞こえないように話していることにも、

肩が触れそうな距離にも、ドキドキした。

そんなときに、

村井君はクラスの女子に

こっち手伝ってくれない?、と呼ばれた。

「あー、ごめん。

俺今プラカード作ってるから無理だわ。

これ、釘も打たなきゃいけないし」

了解、と言って

その子は別の人に声をかけたんだけど、

私の心臓は壊れそうだった。

『釘打ちは…昨日終わったよ…』

「うん…そうなんだけど…」

この、なんとも言えない空気がもどかしかった。

なんで?なんで嘘ついたの?

まだここに居たかったの?

まだ私と話したいってこと?

都合の良いことばかり考えてしまう、

自分が少し嫌になった。

『もうあとここにペンキ塗ったら完成だよ』

「そうだなー、ここ、青だっけ?」

『うん、青だよ。えーっと、青のペンキ、、、』

私と村井君の間にあった、

青色のペンキに手を伸ばしたら、

同じくペンキを取ろうとした

村井君の手に触れてしまった。

『あっ…ごめん…』

恥ずかしくて、すぐに引っ込めた左手が熱い。

村井君の手に触れた、左手が熱い。

顔も赤い気がして、

村井君の顔を直視できなかった。

こんなの、

好きだってバレちゃうんじゃないかって、

恥ずかしくて、怖くて、ドキドキした。

それなのに、

村井君は何事もなかったかのように、

青色のペンキをプラカードに塗っていて、

ひとりで気にしている自分が嫌になった。

村井君に一喜一憂している。

恋ってすごくめんどくさくて、やめたい。

やめたいのに、やめれない。

やめたいのに、やめたくない。