「はははっ。少ないけど君以外にもいるよ。それにしても、飽きずに毎日よく来るね」
「ここ好きですし」
「そう言ってもらえて嬉しいよ」
秋野さんは顔をクシャッとさせて笑った。
嬉しいときに顎の髭を撫でる癖も、自分では気づいてないんだろうな。
「そうだ。昨日買った恋愛小説、読み終わりましたよ」
「相変わらずはやいなぁ。で、どうだった?」
「僕は推理小説とかのほうが好きです」
「はははっ。そうだろうね。あれは女の子が読むような内容だからねぇ」
昨日買った恋愛小説とは、今日数学の授業中に思い出していた、登場人物に惹かれたという本だ。
昨日なんとなく目に止まったそれを買おうかどうか迷っていたときに、
秋野さんが「経営苦しいから買っておくれよ」と言わんばかりの顔で勧めてきたので、その本は僕のスクールカバンの中に突っ込まれた。

