「あれは、女子達がしつこいから、適当に黙らせただけ。第一、俺、好きな人いるし…」

「おぉ~。恋する乙女ですか~」



何だか意外だったので、ちょっと面白がってみる。



「いや、乙女じゃないけど…」

「あはは、そうだね」



正真正銘、男の子だしね。

それに、どちらかというと、栗栖くんは、かっこいい系のイケメンだ。よく、ここ(バイト先)にも、同じ学校の女の子(らしい人)が来ている。モテるんだろうなぁ。



「その、『好きな人』って、誰かわかる?」

「え、そんなの知らないよ。…私が知ってる人なの?」

「うん。すごくよく知ってる人」



私の知ってる人…?



「まっ、まさか…店長?」

「…違うよ」



そんなに落胆したように言わなくても…。

でも、もしも店長のこと好きなんだとしたら、店長、一回り以上も年上だし、何より、旦那さんと息子さんがいるから、さぞかし泥沼になってただろうなぁ。恐ろしや。



「本当に鈍いんだね」

「?誰が?」

「増田(ますだ)さんが」

「え、私?…よく言われるけど…」



同じ学校の友達にも、家族にも、よく言われる。

自分ではイマイチわからないんだけどなぁ…。



「ふ、やっぱり?」



あ、笑ってる。

かっこいいなぁ、やっぱり。

笑顔が絵になる栗栖くん。さすがです。



「…俺の好きな人、知りたい?」

「気になる…!」



これはもしかして、教えてくれる流れ…!?