けれど既に栗栖くんは決めてしまったみたいで、さっきからニコニコニコニコしてる。

…これから何が起こるんだろう。怖い。

ちょっとした恐怖を覚えた。



「増田さん、ご飯は?」

「え?あぁ、食べてない…」

「何かある?リクエストとか?」

「…お腹空いてないし、別にいい…」

「ダメ。ちゃんと食べないと」



…オカンか。

うちのお母さんも言わないよ、そんなこと。



「…食欲ないのに、リクエストなんてあるわけないじゃん」

「じゃあ、嫌いな食べ物とかある?」

「…辛すぎるのと、苦すぎるのと、甘すぎるのと、しょっぱすぎるの」

「…不味い料理っていう解釈でいい?」

「うん」



私がそう返事すると、栗栖くんは何やらブツブツ言いながら考え事をしてるように見えた。…傍から見ると相当不気味だ。



「定番だけど、カレーでいい?」

「う、うん…。栗栖くん、作れるの?」

「え?そうだけど…」

「すごい…!」



何を隠そう、私は料理が得意というわけではない。…むしろ苦手。レシピを見てると、頭がグルグルしてしまう気がする。

…栗栖くん、尊敬します…。



「…っ。ありがとう…」



褒められるのに慣れているはずなのに(だって、ものすごい数の賞状やトロフィーがあるから)照れたように顔を背ける栗栖くん。

…可愛い。


さっきから負けてばっかりな気がするから、私は嬉しくなる。



「栗栖くん、照れてるの?…可愛いよ?」



本心だけど、敢えて、ちょっとイライラさせるような言い方で言ってみた。