栗栖くんのお母さんは、酔いが入っているとはいえ、なかなかに面白い人だと思う。…ちょっと子供っぽい感じもしたけど、お酒のせいかもしれないし、仮にそういう性格だとしても、大人っぽくて美人という見た目とのギャップがあっていいと思う。
「…はぁ。わかった。シャワー浴びるだけだからね。くれぐれも気を付けて」
「わーってるって~」
「…ダメだこりゃ」
…栗栖くんは、文字通り、頭を抱えている。
酔いが入った栗栖くんのお母さんは、覚束ない足取りで、どこかへ行ってしまった。
話の流れで察するに、お風呂などみ行ってシャワーを浴びてくるのだろう。
…ぐでぐでに酔ってたから、本当に溺れないか心配だけど…。
「…増田さん、そんな心配そうな顔しなくても、多分大丈夫。ここの流れまで、いつものことだから。…まぁ、彼女のくだりは今日が初めてだけど」
「…なんで否定しなかったの」
「これからそうなる(願望)し」
「まだわかんないじゃん」
「でも、増田さん、俺にドキドキしてるでしょ」
勝ち誇ったような笑みを浮かべながら、栗栖くんは聞いてくる。
ドキドキなんかしてない。…多分。してない…はず。
「何も言えないのは、当たってるってことだよね?その調子で、もっと俺にドキドキしなよ」
「…慣れてないだけで、別に栗栖くん相手だからってわけじゃないと思うよ」
「なら、もっとすごいことして『俺相手』じゃないとドキドキしないってくらい、ドキドキさせてあげようか?」
…こんなとき、ふざけたように聞いてくれればいいのに。
割と真顔で聞いてくる栗栖くんは、一生懸命働いてる時のような熱い瞳をしている。
「え、遠慮します…」
「それは俺がやだ。やるから。俺の中では決定事項だから」
なんて勝手な…!
私の意見丸ムシですか。



