なんとなく、栗栖くんのお母さんってエレガントな人をイメージしてたから、何だか拍子抜けしてしまった。…面白いお母さんだ。酔い潰れてる(らしい)から、どういう人柄なのかはわからないけど。面白い人だと思う。きっと。(希望的観測)
そんなお母さんを、栗栖くんはちょっと面倒くさそうに介抱している。
…手慣れてるなぁ。
栗栖くんの言う通り、よくあることなのだろう。
「…ちょっと、母さんベッドに寝かしてくる」
「あ、うん…!い、いってらっしゃい…?」
「ふふ…。いってきます」
どう返事していいか分からなくなって、多分おかしい返事をしてしまった私を少しだけ笑って、栗栖くんはお母さんを運びに行った。
…あぁ、恥ずかしい。
普段、あんまり何も気にしてないから(女子校なので、周りの男子がいない→周りを気にしない…に、育つ)自分にそんな感情があったんだなぁ…と、変に不思議にも思う。…そんなこと気にしてる場合じゃない。
にしても、広いなぁ。この部屋。
…私の家より断然広い。
…色んな賞状とかが飾られてるけど、全部栗栖くんがもらったものなのかなぁ。すごい。いっぱいある。
でも、それ以外はあんまり何もない。
生活感がないというか…。…栗栖くんも、寂しい思いしてたのかな…。
「や~だ~!あたしも会いたい~!七瀬(ななせ)の彼女~!」
「母さん、酒臭いから…!」
「風呂入るから~!」
「その状態じゃ溺れるんじゃ…」
「じゃあシャワー浴びる!」
向こうの方から、栗栖くんと栗栖くんのお母さんの声(?)が聞こえる。
…というか、彼女じゃないです。…お宅の息子さんに、さっき告白されましたけど。…ってか、否定せんのかい、栗栖くん。否定しようよ、そこは。



