「秋文は、サッカーを続けないの?好きなのに……。」
 「まだまだやめるつもりはない。日本代表にももう1回なるつもりだしな。」
 

 秋文は千春の不安そうな顔を見て、安心させるように頭を撫でながらそう話してくれた。


 「まだ会社はスタートしないし、しばらくはモデルとか打ち合わせだけ出て、他の仕事は花巻先輩たちに任せるつもりだから。」
 「そうなんだ……少し安心したよ。秋文はサッカーが大好きだからプレイして欲しい。……また、忙しくなるなら言ってね。私もフォローするから。」

 
 今日みたいに、忙しいときに夕飯を作ったり、部屋の掃除をしたり、そんな千春にも出来ることをしてあげたかった。
 好きな人が夢に向かって頑張ってるのを近くで応援出来ることは幸せだと思う。
 けれど、先ほどから何かがひっかかるのだ。


 「さっきも話したけど、千春が傍にいてくれれば、何でも頑張れる気がするんだ。………おまえと付き合えるようになって、俺が甘えているのかもな。千春がいなきゃダメだな。……離れるなんて考えられない。」
 

 秋文には珍しく弱音を吐き、そして甘えてきていた。もう一度秋文に強く抱きしめられる。

 千春も、秋文と離れるのは寂しいし、ずっと傍にいて欲しいと願っていた。それで、飲み会でも立夏や出に相談したぐらいだ。
 秋文の言葉は、嬉しいはずなのに。
 


 素直に喜べず、彼の腕の中にいながらも、言い表せない不安とモヤモヤした気持ちを千春は感じていた。