15話「もっと夢中になって」



 誕生日だからと言って浮かれてしまっていたのは、自分でもわかっている。そして、初めて秋文の家に着て、そして豪華な部屋に驚きながらも、ドキドキが更に増してしまっていた。綺麗な部屋だけど、少し乱雑に置いてある服や靴、本などを見ては、自分しか知らない彼を見ることが出来て、嬉しくなっていた。

 自分から抱きついてしまったのも、きっと誕生日のせいだ。
 そう言い訳をしてしまうけれど、それでいい。
 秋文ともっと一緒にいたいというのは、本心なのだから。



 「………。」
 「えっと、秋文?……だめ、かな……。」

 
 いつまで経っても返事が来ないので、千春は恐る恐る彼を見上げた。
 すると、彼の腕が伸びてきて、頭の後ろを優しく支えられ、そのまま前髪をあげられて、額にキスをされた。 


 「ん……秋文。」
 「おまえな、今日、なんなんだよ。」
 「え……。」
 「可愛い格好してるし、さっきから可愛い事してくるし。……俺だって我慢してるんだ。」
 

 間近で見る彼は、少し焦りと戸惑いがありながらも、目には熱を帯びていた。
 そんな瞳を見つめると、彼も同じ気持ちだったのだとわかり、胸が高鳴る。


 「……どうして我慢してるの?」
 「それは、おまえが……。」
 「私は秋文とくっついたり、もっと近くに居たいよ。それなのに、それを我慢されたら……私はその方が寂しい……。」
 「……千春。」


 千晴は緊張からなのか、少し震えた手を伸ばして彼の頬に手を当てる。
 こんなにもドキドキしているのに、秋文に触れるだけで安心してしまうのだ。彼の熱には何か不思議な力でもあるのかと思ってしまうぐらいに。