「話の続きは、俺の家に行ってからでいいか?千春の作ってくれたの食べたい。」
 「あ、うん。」


 気づくと、先程来たマンションの駐車場に車が停車していた。
 自分から秋文の家に行ったのに、今さらドキドキしてしまう。幼馴染みとしての友達しても来たことがないのに、恋人になって始めて部屋に入るのだから、緊張しても仕方がないと思う。


 「あ、その前に。」
 「え?」


 秋文がシートベルトを外し、そう言うと千春の顔に手を伸ばして、少し強引に引き寄せ、そのまま唇に短いキスをした。
 

 「誕生日おめでとう、千春。」
 「………ありがとう。」
 「ケーキ買ってあるんだ。それも食べよう。夕食は?」
 「まだ………。」
 「じゃあ、一緒におまえが作ったやつ食べてからだな。」


 キスをした後、すぐに離れて普段通りに秋文は話をしてくる。
 けれど、千春は突然のキスとお祝いの言葉に、思った以上にドキドキしてしまい、簡単な返事しか出来なかった。


 彼とは何回もキスをしている。
 それなのに、どうしてこんなにも緊張してしまうのだろうか。
 その答えをわかっていても、今はわからないふりをしないと、冷静ではいられなくなる事を千春はわかっていた。
 こっそり深呼吸をしてから、千春は秋文の車を降りたのだった。