13話「誕生日の勘違い」





 千春は、いつも誕生日は誰かと一緒だった。
 子どもの頃は両親と。学生の時は、四季組や友だちと。そして、大人になってからは恋人と。
 そう考えると、沢山の恋愛をしてきて、誕生日には必ず恋人がいたのだと考えると、「ひっきりなし」と言われても仕方がないように思えた。


 千春は、人にどう思われてるのか、気にしすぎる性格だった。だからか、安心できる人と一緒にいたいと強く願うようになっていた。
 「好きだよ。」とか「可愛いね。」とか、褒められると心から幸せだった。
 けれど、「嘘つき。」「飽きた。」「体だけ相性いいね。」そんな言葉を聞くと、地に落ちてしまうような絶望感に囚われてしまうのだった。



 そんな事をずっと繰り返して、今まで生きてきたけれど、今は違う。
 秋文が何もかも変えてくれた。
 彼は、千春の中身を見て好きと言ってくれて、大切にしてくれる。一生の短い時間で、こんな相手を見つけられたのは幸せだと、日々思うほど幸せだった。
 唯一、彼といて寂しくなる事は、会えない日が多いことだった。



 サッカー選手としての試合や練習だけではなく、他の仕事も多くこなしているようだった。
 けれど、最近特に忙しいようで、試合がない休日も会えない日が多かった。
 付き合いはじめて1ヶ月になるが、まだ1度も1日中秋文と過ごしたことはなかった。


 「今年は1人かぁー。」


 今日は千春の誕生日当日。
 この日は平日だったが、千春の会社ではバースデー休暇というものがあり、今日はそのため仕事は休みだった。
 本来ならば、秋文と1日一緒に過ごすはずだったけれど、彼に急な仕事が入ってしまったのだ。