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 「ま、あんだけ飲めば、そうなるわよね。」
 「千春もショックだったんだろ。仕方がない。」

 テーブルの上に腕を組んで枕にして眠ってしまった千春を3人はそれぞれの思いで見つめた。


 「…………ほんと、バカなやつ。」
 「で、秋文はどうすんのよ。また、別れてホッとしてるだけなの?」
 「………なんだよ。」
 

 秋文は、痛いところをつかれてしまい、視線を立夏から逸らした。それを見て、立夏は大きくため息をつく。

 「千春は全く気づいてないのよ。今日の言葉聞いてわかったでしょ?素の自分を好きになってくれる人なんていないと思ってるわ。」
 「…………。」
 「今回も別れたから秋文は安心かもしれない。けど、次こそ千春がそのままの自分を出して恋人見つけたら、あの子、誰かに取られるわよ。いいの?」


 立夏の強い言葉が、秋文を責めていく。
 秋文は逸らしていた視線を、千春に向ける。先ほどまで泣くのを我慢していた瞳から涙が溢れた跡が残ってた。
 それを見ると、秋文は胸が痛くなる。


 「俺は………。」


 そこまで、言ってから秋文は言葉を飲み込んでしまう。
 こんな近くにいるのに、目の前の女は全くこちらを見てくれない。それなのに、そんな事を言っていいのだろうか。
 けれど、千春が本当に手の届かないところまで行くのは、想像が出来ないし、考えるだけで苦しくなってしまう。


 俺は、素のおまえが好きなんだ。


 そんな言葉を彼女に伝える日が来るのか。
 秋文は、大きくため息をして味のしないビールを飲み干した。