「もし春に千春が帰ってくることになったら、この部屋に一緒に住まないか?」
 「え………。」
 「おまえの部屋はもうないだろ。家事も千春だけに任せないで俺がやるし、また忙しくなっても会えなく事はなくなるだろ?だから、一緒に住んで欲しいんだ。」


 秋文は、告白したときのように真剣で、でも少し照れながらそう言ってくれた。
 少し先の未来を、自分とのことを考えてくれているのが千春は嬉しかった。
 帰国したら、彼と一緒に暮らせる。
 それは、とても幸せなことで、特別なご褒美のようだった。


 「うん。私も秋文と一緒に住みたい。秋文の事、精一杯サポートするから。お邪魔したいです。」


 秋文につられて、千春も照れながらそう返事をすると、秋文はホッとした表情を見せた後、にっこりと微笑んで、「ありがとう。」と言ってくれた。

 

 そのあと2人でリビングのソファに座り、手を握り寄り添いながら会えなかった分の話をお互いに伝えあった。真剣に仕事の話をしたり、笑いあったり、そして、嫉妬をして不貞腐れたり。

 それでも最後は2人で暮らす春を思うのだ。


 「春になるのが楽しみだね。」
 「あぁ。今度は離れないで2人で暮らそう。」


 出会ってから10年も経ってからの恋。
 そして、すれ違いからの別れ。

 それでも2人はこうして手を繋いで未来を想像しているのだ。
 

 「秋文、好きになってくれてありがとう。」
 「これからは離れた3年分も、今まで以上に愛してやるから、覚悟しておけよ。」


 ニヤリと笑う愛しい人の甘い言葉。
 その返事の変わりに、千春は秋文にキスをした。


 これからも、こんな幸せな時間が続くことを願いながら。