37話「春の予感」




 目が覚めると、カーテンが明るく光っている。
 太陽の高さを見ると、きっとお昼前ぐらいだろうと千春は思った。
 気だるさを感じるけれど、これは幸せな苦痛であって、千春は全く嫌な気分にならなかった。
 隣には愛しい彼がいる。
 そう思って横を向くと、そこには誰もいなかった。


 千春は一気に焦ってしまい、ベットから飛び起きた。
 昨日のは夢だったのだろうか?
 それとも、秋文は本当はイヤで部屋を出ていってしまったんじゃないか。
 そんな悪い思いが頭をよぎったのだ。
 急いで寝室を出て、リビングに向かう。


 「秋文っ!」
 「あぁ、千春。起きたの…………っ千春。その格好は。」
 「あれ?出だ………。」


 リビングに秋文がいると思ったけれど、そこには秋文ではなく出がソファに座っていた。
 一瞬こちらを見てから、顔を赤くして視線を窓へと向けてしまう。


 「あれ?………秋文は………。」
 「やっと起きたか、って、おまえ何て格好してんだよ!出いるだろ。」
 「……あ、きゃぁ!!」
 

 自分の服装を見ると、寝る前に秋文に着せてもらったブカブカのセーターに下は自分の下着のみだった。
 長めのセーターで、下着はギリギリ隠れるか隠れないかぐらいであり、とてもじゃないが人前で見せれるものではなかった。

 小さく悲鳴を上ながら寝室に戻って、千春は真っ赤になった顔を冷ましながら着替えをしたのだった。