36話「求め合う熱と愛しさと」





 
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 温かい。

 そして、人の呼吸を感じる。
 誰かと一緒に寝るなんて、久しぶりだ。
 とても安心できるし、心地いい。

 千春はこれは夢なのではないか。
 そんな事を考えてしまっていた。
 
 目が覚めてきた千春は、ゆっくりと目を開ける。
 すると、目に入ったのは、誰かの体だった。細身だけでがっしりとしていて、男の人だとわかる。
 その男性に千春は向き合いながら優しく抱き締められていた。

 顔を見なくたってわかる。
 千春はそれでも、ゆっくりと視線を上に向けた。

 そこには、幼い寝顔の秋文の顔があった。穏やかに寝息を立てて眠っている。

 千春は、それを見ただけで体の中から込み上げてくる物を感じた。
 やっと会えた大好きな人が目の前にいるのだ。
 3人の彼は変わっていないようで、少し大人になっていて、そして少しだけ疲れているようだった。
 

 「秋文………。やっと会えた……。」
 

 千春は自分から抱きつくように彼の体に顔を埋めた。寝ぼけているからか、こんな大胆な事をしてしまう。
 涙が彼の着ていたセーターに吸い込まれていく。悲しさも寂しさも一緒に彼が取ってくれているようで、くっついているだけで千春は幸せな気持ちになった。


 「………ん、千春………。起きたのか?」
 「………秋文………。」
 「おまえ、また泣いてたのか?……本当にごめんな。全部俺のせいだな。」

 
 千春が抱きついたことで、秋文は目を覚ましたようで、うっすらと開いた目で千春を見ていた。そして、泣いているのに気づくと困った顔で見つめながら、彼は指で涙を拭ってくれた。


 「違うっ!私が悪いの……勝手に夢を押し付けて、いなくなったのは私。そして、あなたからのメッセージを無視し続けたのも………全部、私のせいなの。」


 千春は、抱き締めてくれていた彼から離れようと彼の体を軽く押して、そこから抜け出そうとした。
 けれど、ベットに起き上がった瞬間に、また座った状態のまま秋文に抱き締められてしまう。