「スペインの話を断ったとおまえが言った後。秋文の決めた事だし、会社の事もあるから仕方がないのかと思ってたけど。せっかくのチャンスをこんな形で無駄にしていいのか………。と、ずっと考えてたんだ。」
 「花巻先輩……。」
 「俺はサッカー出来なくなった事に遠慮してるのか、それとも会社を本気でやっていくのか。いろいろ悩んださ。」
 「それは………!」
 「わかってる。おまえが、そんな奴じゃないってことも、会社は本気でやってるって事も。」


 秋文が慌てて立ち上がろうとするのを、花巻は「落ち着け。」と言って止めた。

 そして、秋文がゆっくりと椅子に座り直すのを見てから、また笑顔のまま秋文を見つめた。


 「この前、俺のところに千春ちゃんが来たんだ。」
 「えっ………。」

 秋文は、目を大きくして驚いていた。
 それを見て、「予想してなかっただろ?」と、花巻は笑った。
 確かに、秋文の予想は大きく外れていた。何か条件を付けられると思っていたけれど、そうではなかったようだ。
 それよりも、千春がわざわざ花巻に会いに来たのは、きっと自分の事だろうとわかった。
 彼女が、どんな話をしたのか。
 それが、とても気になった。


 「気になるだろう?」
 「………気になりますよ!冗談でも、俺に惚れたって言ってたとか言わないでくださいよ。」
 「………なんだ、バレてたか。」
 「花巻っ!」


 秋文の焦る気持ちを知っていながら、なかなか話そうとしない彼に、秋文は苛立っていた。その様子を見て、花巻は面白そうに笑っていた。
 それを秋文が一睨すると、花巻は苦笑しながら、やっと話を始めてくれた。