26話「彼女の言葉と先輩の助言」






 サッカーの練習の日。
 秋文は、移籍についてチームに話そうと思っていた。承諾がおりれば、スペインへの移籍が決まるのだ。まずは、話しをしなければならない。
 早めのトレーニングを終わらせて、監督のもとへと向かった。

 しかし、そこにいたのは監督ではなかった。


 「おはよう。秋文。」
 「花巻先輩。どうして、ここに……。」


 今日は足の調子が悪いのか、花巻は車イスに乗っていた。
 
 花巻は、事故後もリハビリを続けていた。そのため、少しずつ歩けるようになっていたけれど、体調や気候によって、歩行が困難になることがあった。今日は、その日のようだった。

 つい最近、秋文は花巻に話をしたいと連絡をしていたが、花巻から会いに来てくれるとは思っていなかったのだ。


 「話があると言っていたのは、おまえだろ?」
 「………もう予想はついてるんですよね?」
 「あぁ。けど、俺の話は、おまえの予想してない事だと思うぞ。」
 「え……………。」
 「さ、行こう。監督には話をしてある。部屋は、ミーティングルームだ。」


 事故の前、花巻が入る予定だったプロサッカーチーム。それが今、秋文が所属するプロチームだ。そのため、花巻とチームは関わりがまだあるようで、特にスタッフやチームメイトの会話から、よく花巻の話題が出ていた。