25話「朝日を浴びて」





 千春のいない四季組での食事。
 秋文の話しも終わると、立夏は持ってきた酒を秋文にすすめた。
 普段は千春を送っていくために、秋文は酒を飲まないようにしていた。けれど、今日は千春もいないし、自分の家だ。立夏がすすめた酒を秋文は、浴びるように飲んだ。

 サッカー仲間との飲み会や仕事の接待で飲む事も多かったが、滅多に酒に酔うことはなかったので、進められるがままに飲んでいくうちに、感じたことのない高揚感が出てきた。


 「立夏、あんまり秋文に酒すすめるな。」
 「なんでよー!秋文だって、普段飲めないから飲みたいわよね。」
 「千春がいないときぐらい、飲んでもいいだろ?」
 「そうだー!秋文、女は千春だけじゃないだからねー?」
 「俺には千春だけだ。」
 「…………さすが長年片思い!あ、もしかして今も?」
 「立夏っ!」



 出が止めるのも遅く、秋文の耳にその言葉は届いてしまった。
 その瞬間。秋文は、一気に酔いが覚めてしまう。


 千春は自分の目の前からいなくなってしまった。そして、居場所さえも秋文に教えてくれなかった。それが意味することを考えて、秋文は頭が真っ白になった。



 「俺は千春と別れたことになるのか?」



 俯きながら独り言のように、恐る恐る秋文がそう言う。

 すると、立夏は「今頃気づいたの?」とケラケラと笑い、出は「そういう訳ではないんじゃないか?」と必死にフォローをしている。