乱雑に車を止めて、千春が住んでいたマンションに入る。すると、丁度玄関に大家の叔父さんがいて、秋文を見ると「どうした?」と聞いてきた。


 「千春………いや、世良さんの部屋は。」
 「なんだ、少し前に引っ越しただろう?忘れ物はなかったはずだったが………。何かあるのかな?」
 「いや…………何でもないです。」


 秋文は、その言葉を聞いて頭を殴られたような衝撃が走った。
 よろよろと歩いて、自分の車の運転席に座る。

 強く握りしめてくしゃくしゃになった手紙を、また丁寧に広げて、千晴の書いた字を見つめた。



 「どうしてだ?…………何で俺の前からいなくなるんだよ、千春。」



 ドンッとハンドルを拳で叩いて、そのまま顔を埋める。
 目を閉じると思い浮かべるのは、会いたい彼女の優しい微笑みだった。






 『秋文へ

 秋文が真剣で、そして楽しそうにサッカーをしている顔がとっても大好きです。
 だから、秋文の夢を叶えて欲しいです。
 ずっと、応援しています。

 そして、ありがとう。
           千春より』