「ことりちゃんってさー···」

「男が助けてくれるからいいんじゃない?」

注がれる視線・・・何もしてないのに。
みんなの笑い声が聞こえる。

ねぇ、ヤダッーーー···


────ガバッ。


「はぁ、はぁ、はぁー···」

ゆ、め・・・

久しぶりだな、変なこと考えて寝ちゃったからかな。

どうやら昨日、そのままベットで寝てしまったみたいだ。あの人達はもう、居ないのに。


最近、なんともなかったのになー···。

「はぁー」

止め処無い溜息をついた。

今日、りょうちゃんがうちの学校に転校してくる。
りょうちゃんには悪いけど、やっぱり嫌だな。知られたくない。


りょうちゃんー····。
昨日のことを思い出してた。
「一緒のクラスだといいな! 」

────ポっ。

顔、熱いし。

不意に、りょうちゃんの昨日の言葉が頭によぎった。あの、ヘラっとした笑顔と一緒に。
惚れた弱み、というのはこういうことだろうか。

窓からは、朝の眩しい位の日差しが指していた。その日差しが丁度、ハンガーに掛かった制服を照らしてみせた。

行けってことかなーーー

なんて、思ったけど、本心はそこじゃなく、
りょうちゃんに会いたいだけだった。

もう、ほんと困ったな。

重苦しい足と少し浮いた気持ちを交互に持ちながらなんとか教室まで辿り着いた。

ガラガラと、教室のドアを開ける。
それと同時に雑音が一気に溢れだしてきた。

おはよう、なんて言葉はいらない。必要ない。
だって、返してくれる人がいないから。

いつからだろう、人を信じられなくなったのは。

おはようを言ってクラスに入らなくなったのは。

学校に来たのを他の人に認識されなくなったのは。


────。

そんなのは知ってる。
“あの日”からだ。
中学2年生の、“あの日”から。

全てが始まったの。