「由真、好きだよ」
笑顔のまま、秀くんが言う。
「ずっとその笑顔に救われてきた。嫌なことあっても、由真の笑顔見たら頑張ろうって思えた。
最近由真、笑わないこと多くなって、どうかしたのかなって思ってた。
愛想がない俺と一緒にいるの、嫌になったのかと思った。
こんな俺だけど、由真、これからも付き合ってくれるか?」
捲し立てられるような勢いで紡がれた言葉が、秀くんも緊張してたのかなって、私を変に冷静にする。
「変なこと言わないでよ、秀くん。
私が勝手に秀くんの気持ち誤解してただけだよ。
焦ってただけなの。秀くんは何にも悪くない。
今日一日私を楽しませてくれて、ありがとう。
秀くんの笑顔に助けられてたのは私もだよ。
これからも、よろしくね。」
秀くんとお互いに目を合わせて想いを伝えあう。
「よかった、由真がまだ俺を好きでいてくれて」
「そんなのこっちのセリフだよ。もう、ダメかと思ってた。」
二人で一番上を通り過ぎてだんだん地上が近づいてきたゴンドラの中で笑いあう。
地上に着くまで何でもない話をして、お互い今まで知らなかったことを知って。
悩んでたことが馬鹿らしくなるくらい、幸せな時間だった。
「ご利用ありがとうございました」
スタッフさんが開けてくれた扉の外に出て、流されるまま前に進む。
上からじゃなくて同じ高さから見るイルミネーションも、本当にきれいで。
光の粒が私たちを照らしてくれた。
周りの人なんか全く気にならなくて、光と秀くんと私だけの世界に入ったみたいな気分になる。
「来れてよかったなあ」
「来年も来ような」
「うん!」
来年も来れますように。
私たちだけの世界に別れを告げて、私たちは手をつないで帰路についた。
胸はいつもよりも微かに跳ねていて、身体はまだ熱いままだった。

