「観覧車?」

「そう」


左手を引いて連れてこられた場所は、観覧車の最後尾列。

にしても…


「ずいぶん混んでるね…」

「まあ、しょうがないよな」


そういうまま列の一番後ろにつく。

私たちが並んで1分もしないうちに後ろに人が並んでくる。

本当に人気あるんだなあ。そうじゃなかったら、こんなに並んでるのに並ぶはずないし。

暗くなったら、もっと混むんだろうなあ。

だったら暗くなる前に乗っちゃった方がいいよね。



並んで、少しずつ前に進んでいくうちに、だんだん空が暗くなっていく。

完全に夕日がなくなって月が直上に向かう頃、私たちが乗る番が来た。


「足元お気を付けてお乗りください。」


スタッフさんに促されて私たちはピンク色のゴンドラに乗る。


向かい側に座っている秀くんはライトに照らされてただでさえ整っている顔がさらに良くなって、なかなか直視できない。


「由真の言ってた通りだな、イルミネーションすげえ」

「でしょ?」


タイミングよくイルミネーションの光が輝きだして、さっきまでの騒がしさが消えたように思える。

去年の私は、今の状態なんて想像できなかった。

まさか告白したら、付き合えることになるなんて。


今でも信じられない。こうして一緒に二人の時間を過ごしているなんて。


「にしてもタイミングばっちりだったね」

「そうだろ?ここからが一番綺麗だと思って。」

「もしかして狙ったの!?」

「まあ」

「すごい!」

「ありがとな、その笑顔が見たかったから」


思わぬ不意打ちに、顔に熱が灯る。
っ、ずるい。不意打ちで、この言葉とその笑顔は。


そんな笑顔、好きになっちゃうじゃん。

改めて、好きになっちゃうじゃん。


「あ、ありがとう…」


顔からまだ熱は引かない。

顔から全身に熱が行ってしまって、身体全体が火照ってる。

「ちょっと、目瞑って」

「え?」


言いつつ言われたとおりに目を閉じる。

なんとなく、秀くんが動いている気配を感じて、ムズムズする。


「動くなよ?」


え、動いちゃダメなの?

余計に体が強張って、筋肉が固まる。