「ん?どうした?」


左ポケットに入っているホッカイロを、さっきよりも力強く握りしめる。




「…これ」


そして、強く握りしめたホッカイロをポケットから出し、佐伯先生の目の前に差し出した。



「使ってください」


本当は目を見て言うつもりだったが、恥ずかしさと緊張感から俯いたまま言った。



ドキドキ。

ドキドキ。


今まで感じたことがない、緊張感。


ポケットから出た手に、冷たい雪が触れる。



ドキドキ。


ドキドキ。



なかなか受け取ろうとしない佐伯先生。




…ダメなのかな?



恐る恐る、俯いていた顔を上げた。