12月の春、白い桜が降る。

予想外にもひなたは電話にすぐでた。

「もしもし?ひなた、どうしたの?」

電話の向こう側に向かって問いかける。

「なんで?」と、ひなたは明るい声で返してきた。

単にデートのことを忘れていただけなのだろうか。
あまり病状が悪化したとも思えない。

「今日紅葉を見に行くんじゃなかったの?」

と僕が聞くと、ひなたはうっそ、そうだっけ!?と電話越しにでもわかるくらい慌てふためいた声を発して、

すぐ行くよ!と電話を切った。

それから三十分くらいたってひなたが待ち合わせ場所に現れ、
十月中旬にも関わらず汗をかきながら謝っていた。