12月の春、白い桜が降る。

「ひなたちゃんとはどう?」

母の唐突な質問に、一瞬戸惑ってしまった。

「別に普通だよ」

母とこうして二人で食卓を囲うのは久々で、小っ恥ずかしかった僕はなんと返したらいいのかわからず、あやふやな返事をした。

「記憶がなくなったとき、きっと…辛かったでしょうね」

そりゃあそうだろう。
自分も病気で辛いって時に、恋人に忘れられてしまうなんて。

僕だって、彼女との思い出を、出来る事なら思い出したい。