12月の春、白い桜が降る。

「……もしもし」

『ねぇ、冬郷くん、大丈夫?もう、十日も来てないけど…』

「え、あ、そっか。ごめん。もう十日もたってたんだ」

『…来れるようになったら来てね。康平もみんなもまってるから。』


冬休み中は、一度も外に出ていない。

母も気を使って、飯の時以外は話しかけたり部屋に入ってきたりもしなかった。

辛くてしんどくて何もする気が起きない、死にたい、とか言う程でもないが、
わざわざ外へ出たいとも思わず、ひたすら部屋で本を読んだりスマホをいじったり、今まで撮った写真を見たりしていた。

そのまま気づいたら、学校が始まって、十日間もサボっていたようだ。

…ひなたは、今どうしているんだろう。

家族のことは?自分自身のことは?

…僕のことは、本当に綺麗さっぱり忘れてしまったのだろうか。

あんなにも愛してくれた人は、彼女だけだったのに。