12月の春、白い桜が降る。

道なんか覚えているはずもなかった。

ただ記憶にあるのは、あの綺麗な夕日だけ。

赤い空が、並ぶ街の景色が、私の頭の中で揺れている。

薄着のまま飛び出してきた私は、傍から見たらきっと寒くて凍え死ぬ様な格好だと思う。

でもそんなこと考えてる余裕はなかった。


私にはもう命がない。

あの景色を一目だけ、一目だけでいいから、どうしても最後に、目に焼き付けたかった。

でも結局、公園は見つからなかった。