しまった、と思った時には遅かった。

姉は驚いたような悲しいような顔をしてから切なく微笑んで、

「ごめんね」とだけ言った。

久々に聞いた姉の謝る声は震えていて、
今にも泣きそうなのがよく伝わった。

僕は逃げるように帰った。

次の日も、なんとなく嫌気がさしたままなので謝りにだけ行った。

姉はベッドで音楽を聴いていた。

僕に気づいていないようなので、近くまで行くと姉はイヤホンを外す。

それから「お姉ちゃん、昨日はごめん」と謝った。



「なにが?」





姉は覚えていなかった。