12月の春、白い桜が降る。

私達は、私の席で二人でお弁当を食べ始める。

そこへ、一人の小柄な男子が話しかけてきた。

その男子は、今日、自分が日直だから、科学のノートを僕に提出して欲しいと言った。

楓はそうだったー、とか、めんどくさーとか、独り言を言いながら自分の席へとノートを取りに戻る。

私は座ったまま椅子を傾け、机の引き出しから科学のノートを引っ張り出し、その男子に渡す。

しかし、お礼を言おうと思ったがまた名前が思い出せなかった。

顔はわかるのに、何度か話したことがあるのに、

いや、最近では、よく話す友達ですら忘れることがある。

一度も名前を忘れたことがないのは、
特別仲のいい友達や先生、楓と、ようと、家族くらいだった。

というか、今改めてクラスを見渡すが、顔ですらわからない人が何人かいた。

私、本当に最近物忘れがひどいな、とつくづく思う。