ビロードの背中

サラダが下げられ、ナツホは2本目のタバコに火をつけた。


「それにアイツ、アブない事やバカな変態チックな事も言わないし。

私 2人でいる時、音楽とかかけられるの嫌なんだ。

・・アイツ、私が嫌がることは絶対しないし。」


「・・・。」


「もっと違うものが聞きたいでしょ。

あいつの呼吸とか、吐息とか――。

色鉛筆の音、頭を掻く音、本のページめくる音、コーヒー入れる音・・・。

くだらないおしゃべりより、ずっと価値がある。」


こんなこと、考えた事もなかった。

・・・よっぽど彼が好きなんだって思う。



「アイツの事は大好きよ――。


・・・私、劇団入ったばかりの19歳の頃、

劇団内恋愛はダメだって言われてたのに、

ある俳優さんに夢中になっちゃって。

その人結婚してたから、奥さんも含めてメチャクチャになった・・・。