11月。

仁と和美の噂は、嘘のように消えた。

あの日以来、通常業務に戻った仁は、また同じオフィスで、働いている。

『クリスマスプレゼント用意しろ』

なんて言われたが、一体何をあげるべきなのか?

クリスマスまで約2ヶ月。

それとなく欲しいものを探さなくては。

だって、最初、直球で何が欲しいのか聞いてみたが、お前で考えろしか言われなかったから。

仕事の合間、一緒の出勤中、同じ部屋で過ごすとき。

「おい」
「何?」

「お前人の事、見すぎ」
「え?」

気づかれないように見てたつもりだったのに。

「ストーカー」
「んなっ!!」

誰のせいで、こんなことになったと思ってるのよ?

「俺がほしいもの、わかった?」

わかるわけない。欲しいものは、どんな時も、ぽろっとさえ口にしない。

「もういい。あげないからって、ちょ」

むくれてそんな事を言おうものなら。

私を押し倒した仁が私に馬乗りになり、目の前まで顔を近づける。

「な、何よ」
「まだ2ヶ月近くあるんだ。俺をよく見てたら分かる。よーく、見てろ」

「…」
「俺が何よりもこの世で一番ほしいもの」

…それ、私が買えるものなんだろうか?

凄く不安になった。