6月。

仕事にもすっかり慣れ、友美との食べ歩きや遊び、公私共に充実する毎日。

…仁は相変わらず、毎日送ってもらう。

最近は少し、二人の関係が穏やかになってきたような気がする。

仁は、本当は、優しい人なのではないかと、思い始めたせいかもしれない。

そう思っていたのに。

友美が、仕事中、階段を踏み外し、足を軽く捻挫してしまった。

送ってあげたかったが、仕事がどうしても終わらず、先に仕事が終わった仁に、送ってくれるよう頼んだ。

「今夜は、話があるって言ったよな?」
「そうだけど、どうしても仕事が終わらないの。友美も心配だし。送ってくれるだけで良いから」

「お前はどうすんだよ?」
「仕事が終わったら、一人で帰るよ」

その言葉に、仁はあからさまに不機嫌になった。

「お前、それ、本気で言ってんのか?」
「そうだよ、本気に決まってる」

「痴漢がいなくなったとは限んねぇのに」
「もう、大丈夫よ。あれから何日たったと思ってるの?」

仁はため息をついて、私を見つめた。

「仕事が終わったら、会社で待ってろいいな?」
「心配し過ぎ。ほら、早く行って。友美には伝えてあるから」

エレベーターに乗るまで、仁は、待ってろと言い続けた。