あなたの名前は忘れたけれど。

そう思って、俺はテレビのチャンネルを彼女から奪い電気を消した。


彼女も分かっていたかのように、俺のキスを受け止める。


柔らかなベットになだれ込む身体。


鼻の奥に広がる彼女の甘い匂い。


口付けを交わし、徐々に下に向かおうとしていた途中、いつもと違う事が起こる。


「…ねぇ…」


いつもなら、何も言わず吐息が漏れる所だが。


「…なに?」


少しだけ動きを止め、暗闇の中彼女の顔を見る。


明かりも何もない部屋では彼女の顔は見えなかった。


「…私、彼氏出来た」


…暗くてよかった。

明かりを消していてよかった。


「そっか」


俺はそう答えて、そのまま行為を続けた。