あなたの名前は忘れたけれど。

「また来るわ」

「うん、またね。気をつけて」


パタンと閉まる扉。

カンカン…と響く階段を降りる彼の足音。


迫り来る静けさ。

あんなにも求めあった熱は、12月の寒さがあっという間に奪ってゆく。


全裸に巻きつけた毛布をギュッと握った。


「好きだよ…」


届かない言葉。

この先一生届くことのない言葉。


またね、と手を振り返してくれた彼の、キラリと光りに反射する薬指。


私と会う時でさえ、外してはくれない。