「君が注意するのはこちらではないですか?」

 再び煽烙が顔を近づけ、気持ちの悪い笑みを浮かべた。
 手にはしっかりと『未完成の賢者の石』が握られている。

「これで私の計画は完成です」

 ギリ、と歯が軋む音がした。

 無力。そう感じた。

(このまま、何もできないまま……!!)

「あとはこの『未完成の賢者の石』に願うのみ」

(こいつのいいように終わっちまうのかよ!!)

「この者! 御冠神楽麟紅の左目に施されし封印を解き放ちたまえ!!」

 パキィ、と音を立て、『未完成の賢者の石』は砕け散った。

 麟紅の意識が、一瞬のうちに遠のいていった――。