~異種魔法異能力挌闘SFファンタジー~ 帝竜 -ミカドノリュウ-

 糸目を気にする少年の名前は『御冠神楽 麟紅(みさかぐら りんく)』。どうにもふざけた名前だが、戸籍にも載っている立派な本名である。もちろん、少年自身、この長ったらしい名字と画数の無駄に多い名前にコンプレックスを抱いていないわけがない。困るときは、例えばテストのとき、名字も名前も書くのに無駄に時間を使うのでいつも問題を解き始めるのが最後になってしまう。それともう一つ、コンプレックスを抱いていることが、先ほどから強調している少年の糸目。中等部、高等部一年時代は『某美少女天才魔道士が主役のファンタジーライトノベルの獣神官』だとか『某人気モンスター育成RPGの最初のジムリーダー』などと言われてしまったほど。しかもその糸目のせいで、本当は怒っている時にまったく怒った表情は作れず、逆に「なんか優しそう」などとまで言われる始末。しかし実際はその逆で、高等部一年のときは入学一週間で同学年の突っ張っている不良(計二十六名)をボコボコにしてしまったほどの男なのだ。それでもなお、事情を知らない、特に女子生徒なんかは顔のつくりだけで「優しそう」とか「仲良くしてくれそう」とか勝手に判断して近づいてくる。最初のころはうっとうしさから払っていたが、今ではもうそれさえどうでもよくなりテキトーに接するしかないと判断している。

「ヤバイな……もう時間がねぇ。入学式すっぽかしたらあいつ怒るしな。やっぱ中学ん時あいつの入学式行かなかったこと相当怒ってるんだろうな」

 などとブツブツ呟きながら、少年、麟紅は自転車置き場(ここ)から徒歩で無駄に40秒ほどかかる生徒玄関のほうへ足を向けた。
 その時、

「あ……あのぉ……」