~異種魔法異能力挌闘SFファンタジー~ 帝竜 -ミカドノリュウ-

「俺は優しいんだ。レディファースト、だよなこーゆーときは」

「ふざけないで。そっちが何にもしないって言うならわたしからやらせてもらうわ」

 そういえば屋上で着ていたローブは保健室以来着ていないな、と麟紅は思った。あれなくて制服のままでいいのか?
 藍奈は制服のポケットから杖を取り出した。そういえば確かに杖は制服のポケットにしまっていた。

「フロウズン! 凍えよ!!」

 杖の先からいくつもの氷のつぶてが飛び出した。
 カーキーはそれこそ日常茶飯事だと難なくかわす。

「黒魔術師……それも氷系統。なら、」

 カーキーは懐に手を入れ、そこからカードの束を取り出した。
 一瞬にしてそこから即座に一枚のカードを選び取り、藍奈のほうへ投げた。
 投げられたカードには、王様の絵が描かれ、隅に7と書かれていた。

「ネツァクのセフィラよ、我に破壊の力を与えよ!」

 直後、カーキーの投げたカードが刺さった地面から、岩の突起物が現れた。
 藍奈はギリギリのところでそれをかわした。

「傷はなし、か。次!」

 カードの束から二枚目のカードを取り出す。騎馬兵が描かれ、隅に8と書かれたカード。しかし今度は投げない。

「ホドのセフィラよ、我に神速の力を与えよ!」

「藍奈! 右後方にステップ! そこから氷の弾丸!!」

「え!?」

 麟紅の声に驚くも、考えている暇はなかった。
 突如カーキーは消え、瞬間的に藍奈の目の前に現れた。
 左手にはナイフ。カーキーはそれを神速の速さで突き出した。
 カーキーはナイフの切先に誰もいないことに気付くと、すぐさま次のカードをかざす。描かれた絵は城、数字は10。

「マルクトのセフィラよ、我に守護の力を与えよ!」

「フロウズン!!」

 麟紅の指示に従い藍奈は氷の弾丸を放った。が、カーキーが作った結界に阻まれ、氷の弾丸は塵となって消えた。

「!!……くっ! フ……!」

 一瞬動揺したが、藍奈はもう一度杖を構え呪文を唱えた。
 直後、

「痛っ!」

「ゲームセット」

 カーキーのナイフが藍奈の右腕をかすっていた。