~異種魔法異能力挌闘SFファンタジー~ 帝竜 -ミカドノリュウ-

 学園都市、高等部周辺商業区。東の大きな校門から学園の中心まで一直線に商店街が設けられ、この界隈で最も人が集中する地域である。
 その『東大通り』の途中をはずれ、裏道をしばし進んだところにそれはあった。
 入ってきた道がある一方以外の三方をビルに囲まれ、そのビルの間からそそぐ陽光が神秘的な場景を浮かび上がらせた。表の門には『黄昏の翼(たそがれのつばさ)・事務所』と書かれた看板が下げてある。奥にあるその事務所は、コンクリート作りの古い代物。周りを植物のツタに囲まれ、魔女がいると言われれば確かにいそうな雰囲気である。

「ここはどこですか?」

 不安になって、たまらず紫音がカークに尋ねた。
 カークは口の端を釣り上げ、偉そうに笑う。

「俺たち<黄昏の翼>の事務所だ」

 「<黄昏の翼>?」と藍奈も尋ねた。カークは頷き、腰に手を当てる。

「<黄昏の翼>……Twilight Wing……裏の世界に迷い込んだ表の住人を助けるのが、俺たちの役目」

「要は魔法使いの何でも屋ってところでござるよ」

 茶髪の女が茜の肩に手を置いた。茜が少しビクッとしたのが見えた。

「拙者は『諸波 朽葉(もろなみ くちは)』」

 朽葉はにこりと茜に笑みを見せた。
 なかなか気前のよさそうな人である。そこで思い切って、麟紅は半分冗談で尋ねてみた。

「拙者とかござるとか、あんた忍者か侍ですか?」

 朽葉は驚いたように目を開くと、大きく笑った。なんか笑う要素あったか?と麟紅は頭を抑えた。

「ハッハッハ、よくわかったでござるなぁ。確かに拙者は忍者でござるよ。くノ一じゃ、くノ一」

 朽葉はさもおかしいのか、笑いが止まない。まさか思ってもいなかった答えに、麟紅は乾いた笑いがでてしまった。