~異種魔法異能力挌闘SFファンタジー~ 帝竜 -ミカドノリュウ-

 一瞬、視界が真っ暗になったと思ったら、次の瞬間には茜がいたところに少女の姿を見つけきれなかった。代わりに目に映ったのは……

「狐……?」

 また、視界が揺らぎ、暗闇へと転じた後、麟紅の視界は元の風景に戻ったと思われた。
 このとき、麟紅の右目がうっすらと開き、中から翡翠(ジェイドカラー)の瞳が光ったあと、また閉じられたことを知る者は、おそらく麟紅を含め誰一人としていないだろう。
 そして、元に戻ったと思われた視界には、とんでもないものが映っていた。

「あ、あれ? 安心……できねぇ……」

 思わずもれた第一声がこれ。その声に茜は反応し、目を覚ました。
 眠そうな眼をこすりながら声の聞こえたほうへ顔を向ける。その表情がなんともかわいらしい。

「ん、え……? あ! あ、え~っと御冠神楽君!!」

 いきなり自分の名前を呼ばれたので、麟紅は思わず「おうっ!!」と言ってしまった。その後茜は顔を真っ赤にし、慌ててクラス名簿のほうへ顔を向けたところから、おそらく自分の顔を覚えたあと眠ったのだろう。
 だが、今はそんなことは問題ではない。

「えっと! ほら! 御冠神楽君の名前覚えたの!! これでもう友だ……ち……どうしたの?」

 麟紅のただならない表情に、さすがに茜も気付いたようだ。
 そして、麟紅の視線が自分の頭に向けていられると知ると、慌てて頭に手をやった。
 別に頭にゴミが乗っているとかそういう程度のことではない。
 乗っているものは、耳。
 それも、狐のそれだった。