― 髪の毛、伸ばしたんだね。

ショートカットがよく似合う、そんな女の子だったから。

― あの人がね。女はロングヘアーだろうってうるさいの。

そんな話が聞きたかったわけじゃなくて、適当に相槌を打った。

― もうきっと、たぶん一生。ショートカットにはできないんだろうな。

ショートカットのよく似合った女の子は、ずっと遠くを見るような目をして、栗色の長い髪を風になびかせる。

秋色に染まった日本庭園に、俺と君の二人きり。
真っ赤に染まったモミジの木の下で、もうこれが最後だった。

― あの頃、長妻のことが好きだった。

― ……あたしも。藤堂くんが好きだったよ。

そしてその女の子はもう、“あの人”の妻になろうとしていた。