城野くんを好きになったからって、これからどう行動すればいいんだろう。

人を好きになるのなんて初めてだし、城野くんとは話したこともないし、なにから始めればいいか分からない。

それを胡桃に相談してみると、

「城野のことなら早輝(さき)に聞いてみればいいよ」

と、アドバイスをくれた。

早輝は私の双子の弟。勉強もできてスポーツもできる。同じ血を引いているはずなのに、私とはまるで正反対。

そんな早輝もなかなかモテるらしい。

モテると言っても城野くんとはタイプが違って、城野くんは歩いていると道を開けられるタイプだけど、早輝は取り囲まれるタイプ、みたいな感じ。

早輝は誰とでも分け隔てなく接することが出来て友達も多い。私と似ているところを見つけるのが難しいくらいに似ていない。

胡桃のアドバイスを聞いて、早速放課後に早輝を訪ねた。

教室の外からでも早輝の居場所は分かりやすい。一番人が群がっているところだ。

あんなところに入っていけないよ……。

「紡!何してるの!早くしないと!」

胡桃が私の背中を叩く。

「だってぇ……胡桃助けて……」

「もう、しょうがないなぁ」

胡桃はため息をついて、早輝のいる教室に入っていった。

「早輝!来て?」

そう言いながら、断ることは許さないというように、早輝の腕に自分の腕を絡める。

胡桃のいきなりの登場に、早輝は驚いていたけど、教室の外に私の姿を見つけて、おとなしく胡桃に連行された。

早輝を取り囲んでいた男女が、色めき立っている。

「幸せにしてやれよー!」とか「ヒューヒュー」とか、ありもしない妄想をして、二人をはやし立てる。

胡桃、他校に彼氏いるからね……?

そう、言ってあげたかった。

「紡、どうした?」

私のそばまでやってきて、早輝が私の顔をのぞき込む。

「相談したいことがあるの」

「そう。ここじゃなんだろうし、帰るか」

「え!?いいの!?」

けど、早輝がいた場所にはたくさん人がいる。

先におしゃべりしていた人たちを放っておいて、後から来た私を優先して帰るだなんて……。

「あいつらのこと気にしてんの?大丈夫だよ」

ふっと笑って、早輝は荷物を取りに教室へ戻った。

「えー?早輝帰るの?」と、高い女の子の声が聞こえた。

「あの子、早輝のこと好きね」

早輝たちの様子を見ながら、胡桃が言った。

「そうなの?」

「気付かないの?本当に鈍感ねー、紡って。それでよく自分の気持ちには気付いたわね」

胡桃が呆れ半分、感心半分で私を見る。

確かに、恋には気付けたけど、気が付くのにとてつもない時間がかかってると思う。一目惚れっていうのかな?って思ったこともあったけど、そんなの使えないほど、城野くんを見始めてから時間が経っていた。

「紡、帰ろ」

カバンを持ってきた早輝は、私を見て微笑んだ。