口角が上がり、否応なしに唇がぴくぴく動く。さっきの言葉、撤回してやろうか。相変わらず一言多いやつだ。
「けど。」
「?」
「大量のレンタルビデオに呑めないくせに大量に酒買い込んでて、なのに目は真っ赤で。
心配したし悲しくもなりました。
…俺じゃ未久さんの心の傷、癒せませんか?」
ツンとシトラスの薫りが鼻を突き抜ける、それと同時に両手がふわりと暖かくなる。この暖かさと心地よさは前にも感じたことがある。
「た、貴志くん…」
「第一勘違いも甚だしいですよ、俺があんたを嫌う?有り得ないです。」
「!」
吃驚し、顔をあげると絡まる視線。また何時もの冗談だ、そう思おうとしても彼の表情が頬の赤らみが、そして何よりも何時ものような余裕のある笑顔なんて何処にもなかった。
「…」
何も言い出せない、この湧き始めた感情に名前を付けるには時間が短すぎる。けれど。


