「あんなん軽口に決まってんじゃないですか。言ったでしょ、俺は嫌な奴だって。
あんな言葉だけで判断しないでくださいよ、これじゃどっちが年下かわからないじゃないですか」
「だ、だってそれは…」
調子が狂う。あたしに対して本音で話しているみたいだ。正直信じられない。
いつも余裕綽々でいて嫌味の応酬が絶えなかったのに。
「それに!未久さんのことが本当に嫌いならわざわざ追いかけるような真似なんかしませんよ。
こんなカビ臭くて陰気なとこに誰が好き好んで行くんですか」
悪かったわね、好き好んで行ってて。
あたしの〝秘密の花園〟を何気にディスられて少しムカついたけど黙っておく。
「だいたいあれじゃないっすか。
…あなたが失恋してくれないと俺があなたに失恋するじゃないですか。そんなん嫌ですよ。」
「…………は?」
言葉を紡ぎ出す前に突然と彼の顔が顔面に見え視線が絡み合う。と思えば、ふわりと馨るシトラスの匂い、その後すぐに口唇を介して感じられた暖かさと柔らかいなにか。一瞬の出来事。
「…………は?」
あたし今…何された?まさか、…キス?


