リライト


初めて聞く怒号。思わず動きを止めて彼の動きを注視する。
手首を離され、対面するように両肩を掴まれる。そこでまじまじと彼の表情と垣間見る。何時ものあの嫌味ったらしい笑顔と余裕を持った態度は消えていて息も絶え絶えであたしを睨みつけている。こんな表情を見るのは初めてで、この人こんな風に怒ることもあるんだ、と驚きながらも違う意味で頭が冴えてきてなんだか気持ちが少し落ち着いてきた。

「…すいません。けど言いたいこと言いまくって少しは楽になったでしょ」

そういうと頭ぽんぽんと軽く叩かれる、視線をあげると何処と無く物憂に映る瞳とはぁと息を吐き寂しそうに笑う顔。
こんな彼の姿なんてあたしは知らない。
優しかったりいつもみたくいじわるだったり、初めて見る姿ばかりで流石に戸惑いを隠せない。

「ねぇ貴志くん、何なの?何がしたいの?
あたしにはあなたがわからない」
一瞬の沈黙、気まずい空気が流れる。

「…本当に未久さんって鈍感だったんですね。ああやだやだ。」

溜息を吐きながら片手であたしの肩に置き、もう片方の手は頭を抱え込むように髪の毛を掴む勢いでがしゃがしゃと掻き乱す。