好きだから傷付ける


美空「行こう。いっくんの所へ。」

雅來「え?」

美空「だって、鬼藤くんは
私の事、ちゃんと守ってくれた。
この手で守ってくれたよ。
いっくんに伝えに行こう。」

鬼藤くんは体を起こし
その手を両手でしっかりと握った。

美空「背中、乗って。」

雅來「いや。無理だろ。」

美空「大丈夫。出来るよ!」

そう言ってみたものの
やっぱり私には鬼藤くんを
おぶる事は出来なかった。

雅來「滝川、肩貸してくれないか?」

美空「うん。」

足を怪我した鬼藤くんのペースに
合わせて1歩ずつ歩いた。

普段の3分の1くらいの
スピードだから帰り道がやけに遠い。
でも、その時間さえも私は
愛おしいと思った。
長く一緒にいられる事が嬉しかった。